【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
よくある感情
「…わかったか?」
『…わからない』
「はっ?お前バカなんじゃないか?」
『…そうかも知れない』
「何、認めてんの!?お前真面目にバカ!」
何、真面目にバカって。
真面目なのかバカなのか、どっちなんだろうか。
しとしとと雨の降る、6月の下旬の事。
今ではすっかりお馴染みになった榎本さんと私は、事務所の会議室で以前同様彼の演技指導なるものを受けていた。
蒸し暑い外とは裏腹に冷房ガンガンのこの室内で、2人きりになるのはもう何度目だろうか…?
最初私に気を使ってかなんなのか、あの事務所内で演技指導をしていた榎本さんだけれど、あまりにも怒鳴りまくる榎本さんに、私が会議室でいいよと告げた。
だってあまりにも哀れ。
私が。
どうやら物覚えが悪いらしい私に、彼は根気よく説明してくれるのだけど、声のボリュームは回を追う毎に大きくなっていった。