【完】白い花束~あなたに魅せられて〜

よくある感情





「…わかったか?」


『…わからない』


「はっ?お前バカなんじゃないか?」


『…そうかも知れない』


「何、認めてんの!?お前真面目にバカ!」



何、真面目にバカって。
真面目なのかバカなのか、どっちなんだろうか。



しとしとと雨の降る、6月の下旬の事。



今ではすっかりお馴染みになった榎本さんと私は、事務所の会議室で以前同様彼の演技指導なるものを受けていた。



蒸し暑い外とは裏腹に冷房ガンガンのこの室内で、2人きりになるのはもう何度目だろうか…?



最初私に気を使ってかなんなのか、あの事務所内で演技指導をしていた榎本さんだけれど、あまりにも怒鳴りまくる榎本さんに、私が会議室でいいよと告げた。



だってあまりにも哀れ。
私が。



どうやら物覚えが悪いらしい私に、彼は根気よく説明してくれるのだけど、声のボリュームは回を追う毎に大きくなっていった。


< 280 / 410 >

この作品をシェア

pagetop