【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「まぁいーわ。とりあえず一旦休憩するぞ」
立って熱弁していた榎本さんは、椅子にドッカリと座りタバコに火を点ける。
ゆらゆらと登る紫煙と香りは、あの時みたいに嫌じゃなくなっていた。
それは、彼とのわだかまりがなくなったからか、長く一緒にいるからなのかはわからないけれど。
机に置かれた私の携帯がヴーンと鳴って、開けば翔からのメール。
“今日夜、空いてる?”
それはここ最近月9で忙しい翔からの久々のお誘いだった。
今日は撮影もないし、レッスンはさっき終わったから、後は榎本さんの演技指導のみ。
現在PM6時。
演技指導の予定は7時まで。
あくまで、予定だけれど。
チラリと榎本さんを見れば「何、彼氏?」問われる。
『はい。…今日、何時くらいで終わります?』
予定の時間ピッタリに終わった試しがないから、一応確認してみると「7時に終わらしてやるよ」彼はシニカルな笑みを浮かべた。