【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


そんな笑みを見て、きっと今日はしごかれるんだと思いながらも“7時に終わるよ”と送っておいた。



「どこだ?」


『え?』


「送ってく」


『…は?』


「迎えになんて来られて、スキャンダルになんてなったら勘弁だしな」



榎本さんはタバコを灰皿に押し当てながら、煙と共にその言葉を吐き出した。



あの後―…
翔と榎本さんが対面した時、翔は榎本さんを1発殴っていた。



…多分キスの件で…
それにチャラにすると言った翔と、それを甘んじて受けた榎本さん。



それを内心ヒヤヒヤしながら私が見ていたなんて、2人は知らないんだろう。



再び携帯が鳴って開けば翔から“BOTCH、榎本殺す”なんとも物騒な文が表示されていた。



無言で榎本さんを見やれば、携帯を見ながら「あ〜俺の車から降りる仁菜を見る翔の顔、想像しただけでウケる」なんて言っている。



『…嫌がらせでしょ?』


「嫌がらせに決まってんだろ」



のどの奥でくつくつと笑いをかみ殺して笑う榎本さんは、最初に比べて自然な笑みを見せる様になったと思う。



…それが例え、人をバカにした笑い方だったとしても。


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