【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
榎本さんは私が座った事を確認して車を発進させる。
「ねぇねぇモッチー」
…は?
モッチー?
車内に広がる沈黙に、亜美奈が誰の事を言っているのかわからなくて、視線をきょろきょろとさせた。
「ねぇ、聞いてる?海斗さん」
「…なんだよ」
そんな私にはお構いなしの亜美奈の問いかけに、不機嫌そうな声を出したのは榎本さん。
え?
モッチーってあなたですか?
榎本さん。
まさかの人物に多分私は変な顔をしていたんだと思う。
榎本さんに「ブス」って言われたから。
…うん。
アイドルなんだよ、私。
これでも。
ムカついたから私も『…モッチーのくせに』ぼそりと呟いてやった。
「俺は認めてねぇ」
「え〜海斗さんはもうモッチーだよ榎本の“もと”から取ってモッチー」
「ほぼ原型ねぇじゃねぇか」
「私と亜美奈2人で決めたんだから文句言うなよ。なぁ?」
「そ〜だよ〜仁菜に酷いことした罰だよ、ば・つ!海斗さんなんてカッコイい呼び名禁止っ!」
…なにこの会話。
亜美奈と珠璃は、新しい玩具でも見つけた子供の様な瞳。