【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
小柄な杏里ちゃんと、165センチの私。
笑顔が可愛らしい杏里ちゃんと、感情表現の乏しい私。
普通は、どちらを選ぶ?
「仁菜さん?」
『…え?』
「大丈夫ですか〜?顔色悪いみたいですけど、ちゃんと寝てますぅ?」
『…あ、うん。大丈夫。ありがとう…』
ここに長居するのはよくない。
嫌な感情が湧き上がってきて、どす黒い物が溢れ出てしまいそうになる。
『私収録があるから』
踵を返してトイレを後にしようとした私に「仁菜さん」杏里ちゃんの声がトイレに響いた。
『…何?』
「仁菜さんって〜、翔君と付き合ってたりしますぅ?」
一瞬質問の意味がわからなかった。
杏里ちゃんは笑顔を貼り付けたままにこにこ。
その表情からは何を考えているのかがわからない。
付き合ってるって言いたい。
だから翔には手を出さないでって言いたい。