【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


「あ〜仁菜おっそぉーいっ」


「腹でも壊したかぁ?」


「珠璃〜アイドルなんだから〜、それは聞いちゃダメだよぉ〜」


『……』


「仁菜ぁ?」


「…仁菜?」


「…おい、どうした?」



控え室の入り口に立ったまま、言葉を発しない私を不審に思ったのか、亜美奈も珠璃も笑顔を消して問う。

榎本さんが近寄り、肩に手を押いた。



『…なんでも…ない、です』



榎本さんの手を払いのけて、メイクさんと衣装を着替えるために奥の部屋に行く。



杏里ちゃんの言葉や表情が頭から離れない。



…それに翔。



本当に杏里ちゃんにあんな事言ったの?
…自分に好意を持った女の子に、言ったの…?



小さい方がいいって本当は思ってるの……?



“仁菜さん、翔君と仲良しみたいですけど、手出さないで下さいねぇ〜?”


“そんな事したらアタシ、何するかわかりませんよ”



…怖いと思った。
杏里ちゃんが。


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