【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「…お前どうした?」
『…』
「黙ったままじゃわかんねぇよ」
『…すみません』
「他に言う事ないのか?」
『…』
榎本さんが怒るのも無理はない。
帰りの車の中、亜美奈、珠璃と次の現場に送り届けた今、車内には榎本さんと私の2人きり。
…収録は最悪だった。
あれほど必死に覚えた歌詞は、見事に飛んでしまい。
レッスンしたダンスも間違え、トークでも司会者の話を聞いていなかった。
頭で回る彼女の言葉。
はぁーっと深い溜め息を漏らした榎本さんに、すみません以外に何を言ったらいいかわからない。
「もう一回聞く。お前どうしたんだ?」
『…』
「はぁ。何もないのにあんなだったのか?」
『…』