【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


「泣いたついでに言え」


『…え』



泣いたのは涼にはバレバレだったけど、頬を伝う涙を手で拭って顔を上げれば「気になるんだろ?泉杏里」ニヤリと涼は笑った。



『…………』



涼は撫でていた手を退けて、頬杖をついて聞く態勢になっている。



一瞬開けた口を閉じる。



何を言えばいいかわからない。



ぐちゃぐちゃの感情がぐるぐる回っている中、杏里ちゃんが怖いという事と、翔を信じるという気持ちが強く前面に出てきた。





涼はまだ頬杖をついたまま私が話すのを待っている。



…涼は優しい。
いつも、いつも、私の気持ちを引き出して聞いてくれる。



どんなに纏まっていなくても、それを汲み取って消化してくれる。



それに甘えてばかりの私はやっぱりまだ子供で、ペンダントをぎゅうっと握りしめて閉じた口を再び開いた。



『……杏里ちゃん、翔が好き、みたいで』


「そうだな」



間髪入れずに肯定した涼はそのままジッと私を見て先を促してくる。



あぁ、やっぱり誰が見てもそうだとわかるのか、と。

自分にも周りにも素直な杏里ちゃんが羨ましくなった。



私は、言えないから。
付き合ってるって、言えないから。



嘘で固めた私は、この時杏里ちゃんの素直さが羨ましく思えたんだよ。



だから
だからこそ―…



『…こ、わい』


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