【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


「仁菜」



涼に呼ばれれば、視線がオムライスに行っていて自分が俯いていた事に気付く。



慌てて涼に向き直れば、私をジッと見たまま口を開いた。



「誰だってそんなもんだ」


『…え?』


「先が見えねぇからいちいち不安にもなるし、周りにも惑わされる。それが普通なんだよ」


『そう、なの…?』



みんな、そんなものなの…?
私だけじゃない…?



「当たり前だろ。人間誰しも恐怖心があるんだよ。それが大切なもの程でかくなる」


『…』


「だけど大事なのは、いざって時に信じてやれるか、だ」



涼は私から視線を外し天井を向いたまま「それと、信じさせてやれる力があるか、だ」続けた。



『………涼?』



顔を両手で覆った涼はふーっ息を吐いて「翔を信じてやれ」言って私に向き直った。



その顔が泣きそうに笑うから私は何も言えずに頷くだけで、涼から視線を外してしまった。




多分、私に言わないだけで涼にもいろいろあるのだと思う。



それを私は聞き出す術を持っていないけれど…

いつか話してくれたらいいと思った。


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