【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「杏里は我が儘だからな」
カチッ
タバコ手を伸ばした涼が珍しくそれを吸う。
青白いジッポの火がゆらゆらと揺れ、紫煙とタバコ特有の香りが漂った。
「知ってたか?」
『…何を?』
涼がタバコを口にくわえたまま、何も映っていないTVに視線を向ける。
涼の言葉の意味がわからなくて、怪訝な瞳でそんな涼を見つめた。
視線は、交わらない。
「アイツ、杏里にはことごとく冷てぇから」
そのままTVに向けたまま、ハッと乾いた笑みを出して話し出した涼。
アイツとは、十中八九翔の事だろう。
「杏里はよく翔がウチに来る時狙って来るんだわ」
『…そう、なんだ』
やっぱり翔は私がいなくてもよくBOTCHに行くらしい。
別に私が翔の行動を制限できない事くらいわかっては、いる。
ただ、杏里ちゃんと一緒にいると聞いて喜べるはずなどなく、もやもやと暗い感情が沸き上がってきてしまった。