【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「ほらよ」
『…………あ、りがと』
私の様子に漸く気付いたらしい大河は、ペッドボトルのお茶を買って手渡してくれる。
それを受け取り口に含めば
あぁ、生き返る。
こんな暑いのに、ロケとか死ぬと思う。
最終回になるドラマの番宣を兼ねたロケ。
1泊2日のスピード撮影。
明日の朝にはもう帰るのだ。
「…なぁ、仁菜」
『…何?』
「お前、泉あ―…「おい!」」
大河の言葉を遮ったのは榎本さん。
彼は腕時計を指して時間が押している事を伝えてくる。
ペッドボトルのお茶をもう一口飲み、大河の後に続いてスタッフの元へと戻った。
…大河、今“泉杏里”って言おうとした、よね…?
まさかこんな場所で彼女の名前を聞くとは思っていなくて、気になりつつもロケをした。
ダメ。
集中しないと榎本さんに殺される。
とりあえず今はロケに集中して、後で聞いてみよう。