【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「…仁菜?」
「おーい」
「仁〜菜〜?」
「……おい」
バシンッ!
『……ったぁ〜』
「…お前よく寝てられるな。それが昨日泣き喚いてた奴がする事かよ」
『なっ泣いてないっ!!』
衝撃があった頭をさすりながら、慌ててムクリ起き上がる。
いつの間にか、寝てたみたい…だけど何、榎本さん何言っちゃってんの!
辺りをグルリと見渡せば、亜美奈と朱璃とガミさんもいて、その顔はどこか心配そう。
榎本さんは丸めた雑誌を手に持ち、私を呆れた眼差しで見下ろしてくる。
絶対にそれで私を叩いたでしょうっ!!
暴力男め。
ソファーから立ち上がり、榎本さんの手からそれを奪い取り乱雑にテーブルに投げつける。
『な、泣いて、ないから…』
誰に言うわけでもなく、言い訳の様にもう一度呟いた。
「行くぞ」
それに特に突っ込まれる事はなかったけれど、榎本さんは車のキーを取り出し部屋を出て行ってしまった。