【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
穏やかな小部屋
「…」
「……」
『…………』
静寂が支配する空間。
定期的に聞こえてくるのは鹿威しの音のみ。
チラリと隣の人物を伺うが、その表情はあまりいいものではない。
緊張、してるのかな…
そこから前方へと視線を移せば…
「仁菜、食べないのか?」
『…食べる』
食べるけど…こうも見られては、食べるものも食べられない。
目の前の人物…壱成さんは私…というよりは、私の隣に座る翔をジッと凝視している。
その表情からは何も感じ取れなかった。
純和風なここはいわゆる、料亭。
3人できまずいなんてもんじゃない。
あの週刊誌の件から数日後。
壱成さんはいきなり言ったのだ「長谷川翔くんに会わせなさい」と。
そうして今日、私達はここにいるわけで。
私の父親…壱成さんの視線のせいか、週刊誌の件で後ろめたいのか、翔の表情は硬かった。