【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
本当に、タイミング悪いよ。
翔は絶対に週刊誌の件で呼ばれたって思ってたよね?
だって私ですら、思ったんだから。
「仁菜がこんなに幸せそうに笑う様になったのは翔君、君のおかげだろう。」
…それは涼にもガミさんにも言われた言葉。
“笑うようになった”
まだ感情表現が乏しいと思っているのは私だけなのかもしれない。
自分がどんな風に笑っているかなんてわからないけど、幸せそうに笑っているのは、翔といるだけで幸せだと思えるからだと思う。
「仁菜の笑顔を取り戻してくれて、ありがとう。これからも仁菜を頼むよ」
「はい」
繋いだ手を強く握って言った翔の横顔に見とれたのは、私だけの秘密。
「じゃぁ、堅苦しいのはここまでで、食べようじゃないか!」
壱成さんは、テーブルに置かれた箸を手に取り、豪奢な料理へと箸を伸ばす。
カコン
鹿威しが響く。
ミーンミーン
蝉が鳴く。
少しお酒の入った壱成さんはいつもより饒舌になり、私と翔と3人の笑い声が響き、穏やかな時間が流れた。