【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


肩ではぁはぁと息をする杏里ちゃん。
こんなやり方しかわからないんだろうか。



こんなやり方でしか、気を引けない。



それって悲しい。
悲しい事だよ。



『…バラせばいいよ。それでも私は別れないから』


「なんで…別れてよッ!」


『別れない…ううん。別れられない』


「なんでよっ!!!」



乱雑に置かれたダンボールを蹴散らし、黒い髪をぐしゃり掻き乱す杏里ちゃんは、自分ばかりで周りが見えていない。



『何を差し置いても、譲れないものがあるの。それが私にとっては翔だから…』


「………」


『…こんな事してもお父さんもお母さんも心配するだけだよ?』


「…さい」


『……え?』


「うるさいって言ってんのっ!!!」



ジャキンッ



ヤケにスローモーションに見えた。
自分のアッシュブラウンの髪がはらりと、空を舞って地面に落ちる。


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