【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


ハサミを手にした杏里ちゃんは更に言葉を続ける。



「パパもママも心配なんかしてないっ!誰もアタシの事なんか見てないんだからっ!!!」


『…杏里ちゃ…』


「翔君だけだった!アタシを叱ってくれたのも、アタシを心配してくれたのもっ!」



瞳に涙を浮かべて叫ぶ杏里ちゃんに何を言えばいいか、わからない。



確かにやり方は間違ってる。
だけど、翔しかいないと言う杏里ちゃんの気持ちだけは、痛いほどに伝わってくる。



「なんで仁菜さんなの!なんでアタシじゃダメなの…アタシを見てくれるのは翔君だけなのにッ!!」


『杏―…「仁菜!!!」』



私が声を出したと同時、ギィッ!勢い良く部屋のドアが開いた。



一直線に私の元に走って来るのは、翔。



なんで…?



それには私も杏里ちゃんも目を見開くしかできない。



鼻を掠めたシトラスの香りで、自分が翔の腕の中にいるんだと理解する。



「仁菜、大丈夫かっ!?」


『…翔…な、んで…』


「メールがおかしかったから…」


『メール?』



翔の腕の中で首を傾げる。


< 396 / 410 >

この作品をシェア

pagetop