【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
ハサミを手にした杏里ちゃんは更に言葉を続ける。
「パパもママも心配なんかしてないっ!誰もアタシの事なんか見てないんだからっ!!!」
『…杏里ちゃ…』
「翔君だけだった!アタシを叱ってくれたのも、アタシを心配してくれたのもっ!」
瞳に涙を浮かべて叫ぶ杏里ちゃんに何を言えばいいか、わからない。
確かにやり方は間違ってる。
だけど、翔しかいないと言う杏里ちゃんの気持ちだけは、痛いほどに伝わってくる。
「なんで仁菜さんなの!なんでアタシじゃダメなの…アタシを見てくれるのは翔君だけなのにッ!!」
『杏―…「仁菜!!!」』
私が声を出したと同時、ギィッ!勢い良く部屋のドアが開いた。
一直線に私の元に走って来るのは、翔。
なんで…?
それには私も杏里ちゃんも目を見開くしかできない。
鼻を掠めたシトラスの香りで、自分が翔の腕の中にいるんだと理解する。
「仁菜、大丈夫かっ!?」
『…翔…な、んで…』
「メールがおかしかったから…」
『メール?』
翔の腕の中で首を傾げる。