【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「仁菜からのメールが“相模さんに呼ばれたから翔には会えない”って…お前は相模さんなんて呼ばないだろ。それで相模さんに連絡したら“翔が迎えに来たから先に帰る”ってメールが来たって」
…それは、杏里ちゃんが私に成りすまして送ったメール。
翔の腕の中、ドクドクと心臓の音が聞こえる。
身体もじっとり汗ばんでいて…
心配、かけたんだね…
『でも、どうしてここが…』
「それは講師…南さんに聞いた」
南さんと…杏里ちゃんに近づくさっきの金髪を指差した翔。
…帰ったんじゃなかったの?
「杏里」
そのまま杏里ちゃんの手からハサミを抜き取り、瞳から溢れる涙を拭う。
「杏里、もう止めよう。こんな事しても意味なんかない」
「…そんな事言って、康弘も私の事なんて本当はどうでもいいんでしょう」
「どうでもよくなんてねぇよ!
俺…杏里に嫌われたくなかったから言う事聞いてた…でも…やっぱりこんなの間違ってる」
「うるさいっ!間違ってるなんてわかってる!こうでもしないと私はいつまでも1人なのッ!」
「1人なんかじゃねぇ!!」
康弘さんの声がヤケに響く。
杏里ちゃんが肩をビクリと震わせたのが、遠目からでもわかった。
「1人なんかじゃねぇよ…俺が傍にいるから…だから……1人だなんて言うなよ」
「………うぅ〜…」
1歩近寄りその腕に杏里ちゃんを抱き寄せる。
翔に縛られた縄を解いてもらって、泣きじゃくる杏里ちゃんを見て思う。
“誰もアタシの事なんか見ていない”そんな事ないじゃない。