【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「……お人好しかよ」
ギィッ予想以上に重い扉を開ければ、降りかかった不機嫌な声。
廊下で月明かりを浴びる榎本さんは壁に寄りかかり、私を見下ろして来る。
なんかムカつく。
「仁菜ぁ〜!!!」
がバリ!
凄い勢いで抱きついて来たのはもちろんガミさん。
『ちょ…苦しい…』
「ハッ!何コレっ!アンタ髪どうしたのっ!!!」
私から身体を離したガミさんの声が廊下に木霊する。
…目ざといな。
なんで月明かりだけて、そこまでわかるの?
呆れにも似た眼差しを思わずガミさんに向けてしまった。
「仁菜無事生還〜」
『涼…』
ポンポン私の頭を撫でた涼は、仕事中じゃないの…?
「仁菜が拉致られたって翔から連絡来たら、仕事なんか後回しだろーが。4人で手分けして…」
「てか、仁菜!アンタ髪っ!泉杏里にやられたんでしょうっ!!!」
私と涼の間に滑り込んで来たガミさんは、私の肩をがっくんがっくん揺らす。
ガミさん越しに涼が深いため息を吐いたのが聞こえたよ…