【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「…こんな所で一服?」
「…相模さんか」
ふぅータバコの紫煙を吐き出した榎本君は、そのままタバコを灰皿に押し付ける。
「…結局、仁菜には伝えなかったんだ?」
「…は?」
一体何をだ。
そんな表情の榎本君に、一呼吸置いて口を開く。
「好きだったんでしょ?仁菜の事」
「……いつから気付いてたんですか」
少し吃驚した表情をしながら、設置してあるソファーに腰掛け、リビングから庭にいる仁菜へと視線を向ける。
その優しい眼差しは愛しい人を見つめるもの。
結局女優になった後も仁菜のマネージャーをしている榎本君。
何かと言い合いしたりはしてるみたいだけど、なんだかんだで仲がいいらしい。
「…うーん気付けば、かな」
気付けば5年。
私達の間にも月日が流れてた。
最初は険悪だった2人。
だけど仁菜を見る榎本君の目が、動作が、仁菜を好きなんだと感じさせた。
「ま、俺はこれから先も言いませんけどね」
徐に立ち上がって、庭で翔と話す仁菜を見る榎本君。