【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「で、この前撮影したんだけどぉっ…」
…初耳だった。
まさかちひろが私のいない所で既に撮影済みだなんて。
ちひろの演技が見たかった私としてはちょっとショックだった。
「翔君だっけぇ?すっごい機嫌悪くてびっくりしちゃったよぉ」
『………翔?』
「うんっ!彼いつもあんな感じなのぉ?」
『…んーまぁ、そう…かも?』
翔は普段無口で目つき悪いからね。
…優しい所もあるって知った今はそうは感じなくなったけれど、最初なんて話してなかったっけ。
「ふーんTVと随分違うんだね?」
『……みんなそんなもんだよ』
私のその答えには「仁菜が一番違うもんねぇ」と余計な一言を発したちひろを見ると、怒ってないのに怒ったと勘違いされた。
「あと、は大河?」
…大河?
同じ年上なのにちひろの中で君付けと呼び捨てじゃぁ、随分差があるな…と考えていた私に
「…ファンになっちゃった」
頬をほんのりピンクに染めた乙女、ちひろは、私から普段の奴の話を聞きたくてここまで着いて来たんだ、と確信した。