【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
結局、サボリに来たらしい翔はものの1時間もしない内に、マネージャーの藤村さんが迎えにきて学校を去っていった。
1時間のうちにした会話らしい会話は翔の「お前、先輩なんだから今度裏店教えろ」というものから始まった話題のものだけだった。
その何とも上からな発言にイラついて無視していたら「最近ファンがうざい」と愚痴りだしたから涼経営のあのお店を紹介してやろうと思った。
奴が経営するあの会員制のお店を。
それ以外は流石は仕事に真面目、と関心したくなるくらいに台本読みに付き合わされた。
…勘弁して欲しい。
確かに本を読みたくて図書館が開くまでの時間をここで潰していたからと言って、私が読みたいのは本は本でも台本じゃない。
しかも結構なスパルタだった。
台本読みで本番でもないのに、読み間違えただけで怒られた。
『怒りたいのは私なんだけど』って言いたかったけれど、更にややこしくなるのが目に見えていたから止めておいた。
去り際に「悪かったな。サンキュ」と言った翔は私の頭を人なでしてカフェを後にした。
その行動にはもちろん吃驚したけれど、私がその場をしばらく動けないほど吃驚したのは別の理由だった。
…私に触れた。
確実に“男の翔”が頭に触れた事だった。