【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「なぁ…」
『…何』
「俺、来週の水曜日、暇」
それだけを言った翔はどこかそわそわとしいて、私と目を合わせる事なく視線を宙に彷徨わせていた。
…………は?
訝しげに翔を見るけれど、あーとかうーんとか1人唸っている。
じゅーじゅーと陽斗から受け取ったカフェオレを飲んでいると「おっ前ら青春だな〜!」と、なんとも陽気な声が聞こえた。
「あ、お疲れ様です」
翔に倣って視線をその主に移し頭をペコリと下げる。
こんな真冬にTシャツ1枚でいる彼は寒くないんだろうかと疑問に思うほど。
こっちが寒くなってくる。
そんな身体の機能が一部おかしいであろう彼は“プリメーラ”のカメラマンさんの…確か本田さん。
調えられた顎髭を触るのは彼の癖だろう。
「お前らやっぱそーいう関係か〜」
ん?と翔の肩に腕を回して頭をわしゃわしゃとなでくり回す本田さん。
やめて下さいってとか言いながらもその表情は緩んでいて、まるでじゃれ合っているよう…
普段あまり見せないそんな表情に、仲がいいのかな?と思う。
…………。
気付いたんだけれど、付き合ってんじゃないかって言ったスタッフってお前だろ、本田…