【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
『…なんで高速?』
ていうか、ドライブって何?
人目につきたくないから店教えろって言ったじゃん?
「まだ腹減ってねぇから」
私の視線に気づいたのか、ちらりと私に視線を向けた翔は「それに高速だと人目にはつかねぇだろ?」と。
…前向けよ。
時速100キロ越えしているスピードでびゅんびゅんと移り変わる景色に私は若干だけれど手に汗握っていた。
『…ふーん』
まぁ確かに高速走ってて人に遭遇するなんて奇怪な話はないけどね。
革張りのシートに深くもたれ掛かり翔を観察してみる。
黒のライダースジャケットを羽織りダメージジーンズの翔。
ライダースの裾から見えるのはゴツめの黒い腕時計。
顔を隠すためかハットは少し目深に被っている。
まぁ、お洒落。
私とえらい違い。
なんか負けた感満載の私はもう少しマシな格好にすれば良かった?と少しだけ思った。
「仁菜」
『…何?』
「…いやなんでもねぇ」
『…?』
まっすぐ前を見て運転する翔の表情は見えないけれど、なんだったんだろうか?
流れ行く夜景を見ながら考えていた私はあまりにも座り心地が良かったのか、気付いた時には翔に起こされていた。
…どうやら寝ていたらしい。