【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
仁菜21歳
事務所を出ればすっかり夜も更けっていて、はぁっと息を吐けば見事に白かった。
『寒…』
思わず首に巻いたマフラーを口元まで持ってきて、目的地までの人通りの少ない道乗りを歩く。
とは言っても、目と鼻の先程の距離しかないから、5分も歩かないけども。
私はこのちょっとした1人の時間が好きだったりする。
アイドルとしての仁菜でもなく学校での私でもない。
何も考えなくていい“NASの仁菜”でも“菊池仁菜”でもない。
ただの“私”
これが一番楽。
なんのしがらみもないただの私を、ぽつぽつと灯された街灯と風にゆられる木々だけが見ていた。
街の大きなビジョンも、もうそろそろ消えるだろう時間から働く私は、未成年であって未成年でない。
アイドル仁菜は21歳。
本来、17歳の私が働けない時間も働けちゃうのだ。
なんてゆーかまぁ簡単に言えば?社長が小娘を夜中までコキ使ってやろーっていう、話?…かなと、ありもしない事を思って笑みが零れる。
お陰でこっちはいー迷惑被ってるって話なわけで
17歳の私なら夜中の2次会、3次会なんて行かなくていいのに連れてかれて、はいパシャリ。
スキャンダルできあがりな訳。
結果私は悪くない。
…本当は社長も悪くはないんだけども。
わかっては、いる。