【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


『…涼』


「ん?」



明らかに私ではなく翔を観察するように、まじまじと見る涼。



…失礼でしょう。



『…向こう行って』



お客がいるじゃ、ないの。
まだ9時前といえど、業界人が集まる店。どの時間が忙しいとかは決まっていない。



しっしっと手であしらえば渋々といった感じで戻っていった。


「仁菜、後でウチ来いよ」



…そんな言葉と共に。



『………』



ほら、やっぱり…
面倒くさい。
緩やかにカーブを描いた唇は片端だけが持ち上がっていて、そんな顔した涼は私を疲れさせる事間違いなしだろう。





「…仁菜」


『…何?』


「…あいつお前の、何?」



意味深に笑った涼に違和感を感じたのかなんなのか、カウンターに戻った涼をじっと見つめたまま翔は聞いてきた。



『…姉的存在の弟?』


「は?」



涼との詳しい関係を話すとなればいろいろと面倒。



私は簡潔にガミさんの弟である事を話した。



その言葉に「ふーん」と呟いたけれど、納得いかなかったのか



「家、行くのかよ」



カクテルを口に運びながら聞いてきた。



『…ガミさんに会いにね?』



なんかこれ以上突っ込まれたら関係ない事まで話そうだったから、そう告げて強制的にこの話題を終了させた。


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