いつもと違う日
「大丈夫?どうかしたの?」

尋常でない状況を前に、
私は女の子の後ろから
声をかけました。

女の子は男の子を見つめたまま
微動だにせずに
黙り込んでいます。

救急車を呼ぶべきか
少しの間その様子を伺っていると、
うつ伏せに倒れている
男の子の脚が、
いかにもただ寝ていただけ
といったふうに
こちら側へ少しだけ動きました。

女の子は黙ったままでしたが、
私はその男の子の
何ともない雰囲気に安心して、
変な違和感を残しながらも
再び家の方へと歩き始めました。

おそらく、二人で何か
変わった遊びでも
しているのでしょう。

自分たちだけで
遊んでいるところを
急に割り込まれて、
機嫌を損ねたのかもしれません。

それにしても、
この眩しくてやかましい廊下を
一瞬にして凍り付かせた
あの不気味な雰囲気を、
そう容易く忘れることなど
できませんでした。

それにこの暑さの中、
いくら遊びだとしても
あんなところに長時間いては
日射病になってしまうのではないかと、
だんだん心配になってきたのです。

私は家に帰って少し落ち着いたら、
またあの子たちの様子を見に行って、
もしまだいるようなら
安全のためにも
管理人のおばさんに
一言伝えておいた方が
良いだろうと思いました。

さっきは
失礼な去り方をしてしまったことだし、
何の用だったのかもゆっくりと聞ける
ちょうど良い都合が出来たと思ったのです。

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