いつもと違う日
疑問
いつまで身動きが取れないのかと
緊張したまま様子をうかがっていましたが、
想いが実現するまで
そう長くはありませんでした。
聞きなれた足音が
少しずつこちらに近づいてきて、
扉の前に立ち止まったところで
カバンの中を探る音が
聞こえてきたのです。
その日常的な音に油断しつつも、
念のために扉の穴から
外を確認しようと立ち上がると、
それを待たずに
次の瞬間には
鍵穴から冷たい金属音が
鳴り響きました。
家の鍵を開ける、
いつもの手慣れたリズムを聞いて、
私はもう大丈夫だろうと弟を
招き入れるつもりだったのですが、
開かれた扉は数センチの隙間を作ったところで、
ドンッという大きな音をあげて
引っかかってしまいました。
「あれ?」
意表を突かれた
弟の声がこぼれます。
「ごめん。一回ドア閉めて」
弟の確かな声に
すっかり気を許して、
さっきかけた扉の鎖を外すと
すぐに扉を開きました。
「なんでチェーンつけてんの?」
予想されていたはずの
ごく自然な質問だったのですが、
やはり返す言葉が見つかりません。
あの出来事を
何と説明すれば
解ってもらえるというのでしょうか。
たとえ最高の表現力で
説明したとしても、
この状況でそれを
容易く信じてしまうようでは、
それこそ信頼できる相手としては
十分に疑わしいものです。
私は弟を招き入れると
すぐに扉を閉めて、
今度は鎖をせずに
鍵だけをかけました。
「今日、帰るの早くない?」
緊張したまま様子をうかがっていましたが、
想いが実現するまで
そう長くはありませんでした。
聞きなれた足音が
少しずつこちらに近づいてきて、
扉の前に立ち止まったところで
カバンの中を探る音が
聞こえてきたのです。
その日常的な音に油断しつつも、
念のために扉の穴から
外を確認しようと立ち上がると、
それを待たずに
次の瞬間には
鍵穴から冷たい金属音が
鳴り響きました。
家の鍵を開ける、
いつもの手慣れたリズムを聞いて、
私はもう大丈夫だろうと弟を
招き入れるつもりだったのですが、
開かれた扉は数センチの隙間を作ったところで、
ドンッという大きな音をあげて
引っかかってしまいました。
「あれ?」
意表を突かれた
弟の声がこぼれます。
「ごめん。一回ドア閉めて」
弟の確かな声に
すっかり気を許して、
さっきかけた扉の鎖を外すと
すぐに扉を開きました。
「なんでチェーンつけてんの?」
予想されていたはずの
ごく自然な質問だったのですが、
やはり返す言葉が見つかりません。
あの出来事を
何と説明すれば
解ってもらえるというのでしょうか。
たとえ最高の表現力で
説明したとしても、
この状況でそれを
容易く信じてしまうようでは、
それこそ信頼できる相手としては
十分に疑わしいものです。
私は弟を招き入れると
すぐに扉を閉めて、
今度は鎖をせずに
鍵だけをかけました。
「今日、帰るの早くない?」