∮チェリッシュ∮
∮どこにいるの?
寒い冬。雨がひたすら屋根をうちつける。
窓から覗くとそこには、どんよりとした雲に、強めの風がふいていた

自力で窓を開ければ、ちょっと懐かしい雨の匂いがする
それと同時に強い雨が一気に顔にふりそそいだ

「あぁっ!にゃーにゃ!」

ヒョイ、と体が浮いた

「にゃ~」


「にゃー、じゃないよ!風邪ひいちゃうよ?!」

そういうと、慌てタオルを顔に押し当ててきたた

「にゃ…っ…にゃ」

「あ!ゴメンゴメン。苦しかったね?」

「にゃ~」

柚子はいつも優しくしてくれる

いつだって心配してくれる

だから大好きだった


「はい、ふけたよ!」


柚子は笑顔で言った


そしてギュッと抱きしめてくれた


「にゃーにゃは柚子を置いてどこにも行っちゃダメだよ……?たった一人……じゃなかったね。一匹の家族なんだから………」



柚子の両親は、少し前に事故で亡くなった


今は親戚のおばさんにお世話になっている


でもそれが柚子と『ボク』の出会いのきっかけとなった




「にゃーにゃ大好き~」



柚子の言葉にハッとした


「にゃーにゃって、いつもボーっと一点を見てるよね」



ケラケラ笑う柚子


さっきまでの不安が嘘のようだ



「にゃー」



きっとお互い同じ気持ちなはず



お願いだから柚子もどこにもいかないでー















あれから1年





前と変わらない風景に、雨の匂い、そしてどしゃぶりの雨。



でも今目に見える景色は違って見える




なぜなら








もう一人ぼっちだから。







1ヶ月前に柚子は、ボクを置いて遠い所に行ってしまった





なぜ柚子が居なくなったのかは、猫のボクにはわからない。



おばさんが言うには、柚子は「星になった」と言っていた。

その意味すら知らず家を出て、毎日柚子を探す。



『星は遠いよ………』



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