制服の中
私は、特別なのかもしれない
勘違いかもしれない
でも、先生と電話で話したなんて話、誰からも聞いたことがない
私だけかもしれない


日に日に期待は膨らんでしまう。
校内ですれ違った時に先生が笑顔になるのも、いつものこと。
それなのに、その笑顔は私だけに向けられている錯覚までしてしまう。

電話で話すだけなのに、電話の向こうの「まだ見たことの無い先生の部屋」まで想像できた。

話している最中に電子レンジの音がした。
慌てた声をした時、先生はコーヒーをこぼしていた。
勢いで寝転んだ時、頭に何かぶつかったようで、学校では聞けない「いってえ」なんて声を聞いた。
今でいうモバイルPCを持っていた先生は、話しながらカチャカチャとキーを打っていた。

見せてもらったそれは、大きめの電子手帳みたいだった。

私のベルを見ては「そんな小さいの不便だよ」と、ジェネレーションギャップを感じたような顔をしていた。
パソコンの操作が一切できない私に、カタカナばかりの色んな名称を教えてくれた。

先生との秘密が増えていく事が、私には一種のステータスになっていた。
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