制服の中
総合点では僅差で2位をキープしていたA組が逆転するには、もう最後のリレーしかなかった。
そんな点差になるなんて予想もしなかったから、私の責任は更に重大になる。
もしヘマでもしたら、確実に呼び出される。一発殴られるのも覚悟しないといけない。
そう思わざるを得ない、先輩の面々。

総合リレーのランナーが集まり、走者順に並ぶ。
私の横に並んだ先輩たちは、私の頭ひとつ分くらい背が高く、それだけで嫌な圧迫感があった。

Aはアンカー2年なの?
マジで?なめられてない?

早く始まって欲しい。始まって欲しくないけど、この場の空気が嫌でしょうがない。
女子校の噂の伝達は異常に速く「あのアンカーさ、池上に付きまとってるヤツじゃん」まで言われた。
奈美と和美が私を隠すように、壁になってくれる。

アンカー代わってくれない?

言いたくても、当然言えない。いろんなプレッシャーが押し寄せる。
重い。早く始まって、終わっちゃえ。

奈美が頑張ってくれたが、またもA組は2位を守る。
4走者目の先輩が、アンカーの私に「私が抜けなかったら、マジで頼むからね」と言い残し、追い抜いてくれた。
これから走るというのに、先輩が抜いた瞬間の体育館の歓声は、最高に気持ちの良いものだった。

走者が重なった時、一瞬の静寂。抜いた瞬間に、ワッと湧き上がる。
その興奮を背負った先輩が、私にバトンを渡す。

周囲の歓声は盛大なものだったのに、私には聞こえなくなった。


1位を死守し、無事ゴールできた。
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