制服の中
よくある1日
駅のホームは、もっと幅を広げるべきだ。
ちょっとでも押されたら線路に落ちてしまうギリギリを歩きながら、人の流れに任せてゆっくり歩くしかない。

背後から友人の声がした。

理恵。ツイてない。
嫌いではないが苦手な相手。

彼氏の話しと飼い猫のふたつの話題しか話せない理恵の相手を朝から?どんだけ貧乏クジ引いてんだか。

駅の喧騒のせいにして、私は美樹が私を呼ぶ声を無視した。

せっかく大好きなサビなんだから、もうちょっと聴かせてよ

そう言いたくもなった。
理恵は後ろから私のヘッドホンを引っこ抜いてまでして、一緒に登校したいらしい。物好き。

遅延だってね、人身事故みたい

へえ

どこだろ…えぇ新宿だって〜

ふうん


だからいつも以上に混んでいたのか。納得。
理恵は「過去に見た人身事故の現場」の話を、興奮して話す。
朝から不愉快な話題。
だったらまだ某男子校野球部に属す彼氏のつまらない話か、玄関まで迎えに来てくれるネコのミケちゃんバナシの方がマシ。

めんどくさい朝。
山手線は全線運転見合せ。
電光板を思わず睨んだ。


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