制服の中
後輩らはハッキリしない。
私に何か聞きたいらしく、それを擦り付け合っている様子だった。

あんた言ってよ、えーやだよ、じゃああんた言ってよ

目の前でこんなやり取りが始まると、あまり気持ちのいいものではない。
私は先輩面をし「休み時間終わっちゃうから早くしてよ」と急かした。

代表になった後輩が、私に、すごく聞きづらそうに言った。

「池上先生と付き合ってるって本当ですか?」



私と先生は付き合ってない。それよりなぜそんな噂が立つのか。
1年に妹がいる奈美が話してくれたのを思い出す。「1年にも池上のファンクラブがあるんだって」。

部活の練習時、後輩を1人呼び、怪しまれないよう真相を聞いてみた。

1年の間では「3年の先輩と先生が付き合ってる」ともっぱらの噂だという。
その理由は「先生と先輩が面接室から出てきたのを見た子がいる」。

ここは先輩という立場を抹殺し、自虐に走ってもいいと判断した。

「それ、ただの補習なんですけど」

後輩は一旦は納得したようだった。
それでも、噂というのは簡単に鎮まるものではない。

徐々にエスカレートし、1年と廊下ですれ違えば「あの人あの人」と、好奇の目で見られる。
先生のファンの後輩からは、真正面から睨まれる。
登下校の駅では、指を指されたりもした。

そんな後輩を散らすのが、奈美やモモといった私の友達。

根拠の無い話に様々な色がつき、脚色され、瞬く間に広がる。
噂が一人歩きするのを、学生の身分の私は、黙って見ているしかなかった。


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