辛いくらいに君が好き
はじまり
出逢い
大阪市内の某高校にて―
よく晴れた今日は、高校の入学式だった。
長い校長の話を聞き終えた生徒達は、ぞろぞろと教室へ戻っていった。
真新しく慣れない制服に身を包む、退屈そうな表情をした彼女がいた。
『本田実紅』、それが、彼女の名前だった。
どこにでもいるような女の子の実紅は、父子家庭。
両親は実紅が小学3年のときに離婚した。
兄と姉は、父についていった。
母とは頻繁に会い、互いの家を泊まったり、新年は家族で揃ったり…
家族ぐるみの付き合いをしている。
小さなことで怒鳴り…暴言を吐いたりする父を…実紅はあまり好きではなかった。
家庭の事情はあるものの、実紅は至って普通の子。
実紅の通っていた中学からは交通などの都合が悪く、
同中の子はひとりしかいなかった。
どんな友達ができるのか、実紅の胸は期待と不安で膨らんでいた。
―が、その期待も消え、今は…不安しか残っていない。
教室に入り…実紅は、開いた口が塞がらなかった。