辛いくらいに君が好き
それから実紅は自分の席に座り、誰かと喋るでもなく…
ただただ、ケータイをいじっていた。
「…なんや、ここ…おかしいわ」
背後で、そんな小さな声が聞こえた。
騒がしい周りの声にもみ消されそうなその声は、実紅だけが気付いていたらしい。
振り向くと、黒い髪をおだんごにまとめた、背が小さく…可愛らしい女の子がいた。
目が合うと、彼女は実紅に苦笑いをした。
「……後ろ、座ってもええかなぁ…?」
彼女は上目遣いに実紅を見た。
「うん、ええよ…よろしく」
ぎこちない笑みを彼女に向けると、彼女の心配そうな顔は…
すぐに明るい顔へと変わった。
「ありがとうなっ!うち、綾部朱里。朱里って呼んで!」
「あ…あたしは、本田実紅やから、実紅て呼んでな」
「うんっ、わかったわ!実紅!」
甲高い声の朱里は実紅に優しい笑顔を向け…
実紅は、次第に朱里と仲良くなっていった。