pure love
epi3
何日かたった放課後のこと。
私は陸上で使う線を必死に引いていた。その時後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「市川」
聞き慣れた優しい声。私はすぐに後ろを見た。
「亮太っ」
線を引く手を休め、亮太に体を向けた。そしていつもと違う感情が出てきた気がした。
「何もないんやけどな」
ドキドキと鼓動が鳴っているのに気付いた。
「何やねん」
ドキドキしているせいかうまく舌が回らない。
「ただ声かけてみただけ。頑張ってな!」
笑顔で私の顔を見る亮太をしっかり見ることができない。
「うん、ありがとう。亮太も頑張って」
その日は何をしていても亮太のことばかり考えていた。