僕と彼女の赤い帽子
思い返せば

親に何かをねだったのは


これで三回目だった。


一回目は

小学六年生の


塾での模試の順位が上がったことの報酬として


白黒のミニテレビをおねだりした。


父親は当初反対をした。

成績は自分のことであり


そもそも報酬なんて存在しない。


確かに当然といえば当然だった。


二回目は母親にねだった。


高校入学時に。


今お気に入りのバクチクのCDを聞いているCDデッキだ。



母親は特にいやな顔をしなかった。


僕らの世代の友人は皆中学一年生もしくは

小学六年生からCDデッキを所有したから


初めて母親にねだった僕を不憫に思ったのかもしれない。



三回目が

大阪府立体育館のリングス興行チケット6800円だった。
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