不器用な僕等の唄を
Ⅳ
駅までの道はしっかりと覚えている。
でも上の空。
黒の絵の具水を零してしまった後のような、夜の美しい蝶達が羽ばたくような空色。
きっと、もう誠から連絡が来る事はない。
陸上の弱音も、全国レベルのそのタイムも、好きな音楽の話も。
1日の半分以上が、彼で埋まっていたのに。
「髪の毛、いつ染めたの?」
とか
「彼女って同じ学校の人?」
とか。
こうやって、後から冷静に考えれば話したいことが沢山あった。