不器用な僕等の唄を

窓の方を、夕日を見ながら立っていた。

景色が変わる。

もう誠に会うことがない…そう思うと、涙が溢れる。

その透明な雫を落とさないように、誤魔化すように瞬きをした。

時間差で泣くだなんて、嫌。

どうせなら、誠の前で泣いて困らせてやれば良かった。

さっきからあたし…

「誠、ばっかり。」

桔梗が『お姉ちゃん』と言う気持ちが、少し分かった気がする。

呟いた言葉は、誰にも届かない。

届かなくて良い。

あたしの心の中に、そっと閉まっておければそれで良い。






南街の、あたしの住む街に帰ってきた。



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