不器用な僕等の唄を

駅には結構人がいる。

今日、何かあったっけ?
改札を出て考えてみる。

通り過ぎ行く人々を見ていれば、見知った顔。
絶対、見間違うことのない顔。

『トーコさん。』

蜩(ヒグラシ)が鳴くこの時間帯に、何故か藍色の長袖を着ているトーコさん。
学校でもそうだけど、トーコさんの肘から上を見たことがない。

腕を組んで歩くトーコさんは、威圧感があった。

「…あんた、香坂茉莉?」

いつの間にか、前にきていた彼女は眉を寄せながら小首を傾げる。

「あ、え?はい。」



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