不器用な僕等の唄を

駅から出ると、太鼓の音が体に響いて。

今日は夏祭りだったと気づく。

「…最悪。」

人混みの一歩手前でトーコさんは立ち止まった。

「あの、どこに…?」

「どこって。桔梗と轟のところ。」

「あ。」

夏祭り一緒に行く約束をしていた。

携帯のディスプレイを見れば、着信が何件か入っている。

急いで電話をかけようと思ったけど、

「電話しても無駄。ここら辺は『電波が混み合って』で繋がらない。」

「なら、あたし行きます。」

「何の為にあたしがここに来てると思ってるの?」



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