不器用な僕等の唄を

「うん。」

縁に腕をかけて、その腕の上に顎を乗せる野田ちゃん。

…アザラシ?
アザラシって海の豹って書くんだよね。

何色にも染めていない、その艶やかな黒髪はまたしてもひとつに結えられている。

あたしの無理にチョコレートブラックに染めた髪より綺麗。

「なんで急に?」

「ん…と、矢祇にどうして惚れたのかなって。」

透子の暴走のこと、知らないんだなと思って。

なんて言えないから、話題をすり替える。

他人の馴れ初めなんて、そんなノロケ全然聞きたくないけど、野田ちゃんと矢祇のには興味がある。



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