不器用な僕等の唄を

私の隣に座り、顔を覗いてくる。

「阿久津さん。」

「女?阿久津って、阿久津樹咲(アクツキサキ)?」

「そうそう。」

「ドーベルマンにくっついてる奴だ。」

ど…ドーベルマン?

眉を顰めると、それに気付いた流星。

「部長、あの雪比良兄の方。」

青君ではなく栄の方らしい。

「…なんでドーベルマン?」

呟く私の言葉に答えようとした流星より前に、

「野田ちゃーん!矢祇ー!」

校舎側から声がした。

その声は、校舎の一階の窓から顔を出す紘波で。

「映画行く?映画。」



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