不器用な僕等の唄を
Ⅲ
と思うより先に、片方の子の顔が曇ったのに気付いた。
「ヤギの高校ってさぁ?」
もう1人の子に目を向ける。
その子も何かに気付いたらしく、『あー』と理解した顔になる。
…なんだろう?
七不思議があるとか?カッコいい先輩がいるとか?
「トーコさんいるよね。」
『さん』付けされたその名前は、赤の他人のように思えた。
「オトミヤトーコって、同じ学年にいない?茶髪で色白のモデルみたいな美人顔の。」
…知っている身近な人。
「いる…けど。」
「やっぱり!」
甲高い声が店内に響いた気がした。