不器用な僕等の唄を
ガタンと席を離れる透子ちゃんに紘波が
「透子っ!」
と怒声をきかせたけれど透子ちゃんは行ってしまった。
まるでドラマの一場面を見ているような気分でぼーっとする。
前髪から垂れる水滴の冷たさだけが、現実である事を示している。
紘波は怒っているみたいだけど、透子ちゃんを追いかけることはせずに私をハンカチで拭いてくれた。
「大丈夫?野田ちゃん。」
「うん、大丈夫。ありがとう。」
「あたしが謝っても済むことじゃないけどさ、ごめんね透子が。」
…違う。
傷つけて怒らせた私が悪い。