不器用な僕等の唄を

そのイヤホンから少しだけ音が漏れている。

新曲じゃない。
今年の新入生歓迎会の時に聞いた曲。

何処か寂しそうに聴く音宮先輩の姿に、不覚にも見惚れた。

白い肌に、色が少し抜かれた茶髪に、細い指。

新入生歓迎会で、初めて音宮先輩を見た時に、折れてしまうんじゃないかと感じた。

「…早いのね?」

いつの間にか、こっちを見ている。

「また『お人好し』して遅くなるのかと思ってたけど。」

中身と外見のギャップには、とてつもなく驚かされたけど。

頬杖をつきながら、睨むのは癖なのかもしれない。



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