不器用な僕等の唄を
「すごい!」
「でしょでしょー。」
「私、あの曲本当に好き!」
好きなものに好きって何回言っても飽きないのはすごいと思う。
紘波は嬉しそうに「もっと褒めて」と言う。
透子ちゃんは静かに暗くなる廊下を歩く。
そういえば、あの歌詞は透子ちゃんの体験談なのかな?
そう聞こうと横を見ると透子ちゃんの姿がない。
後ろを振り向けば、窓から後夜祭を見下ろす姿。
「透子ちゃ…。」
薄暗闇でも充分に分かった。
黒目がちなその瞳から、雫が零れるのを。