不器用な僕等の唄を
優しさのアリア。
Ⅰ
トントン…とメトロノームが動く。
その音にイラつき、顔を起こして投げつけてやろうかと考えた。
「やっぱり狸寝入りか。」
「…何?」
「此処にいる時くらい起きてろよ。」
雪比良は、嘘を見破るのが得意だ。
二人きりだから寝てるふりしてんだよ。
殆ど寄り付かない第3音楽室を少し恨む。
最初はそれは少し良いなと思ったけど、今は別。
「…歌詞はまだ出来てない。」
あたし達は無事に進級した。
3年生になった今、大変なことって言えば。
今月末は、新入生歓迎会のライブがある。