不器用な僕等の唄を

正論だ。
紘波の言ってることは、否定したり皮肉ったりできないくらい正論。

でも、何故がその言い方が…。

「紘波、バンド止めんの?」

ピクリとあたしの言葉に紘波が反応してこちらを見る。

すごく物憂げな瞳。

別に責めてるわけじゃない。

いくら親しい友人にも家族にも恋人にも、歩む道というのがあって。

あたしが自分以外の人生を決めて良い権利なんてない。

「まだ、わかんない。その時になって考えるし。」

さっきとは一変して、笑って答える。

紘波の良いとこはこういうところ。
雰囲気を落としたりしない。



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