不器用な僕等の唄を

「おま…奢ってやるっつったの覚えてねぇのか?」

そういう意味じゃないってば。

「覚えて……──、」

るに決まってる。

一緒に回れると思った時嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

でも、今は違う。

何を思ってあたしに世話を焼いてくれてるんだか分からないけど、もう違う。

「ない。帰りにした、そんな約束全部忘れた。」

吐き捨てるようにあたしは言った。

何かを言いかけた雪比良から離れて逃げ出した。





あたしは世界一の臆病者だ。





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