不器用な僕等の唄を

顔をしかめあうこの風景を誰にも見られなくて良かったと思う。

「何サボってんの。」

「…お前が…。」

あたしが何!?

「顔あわせたくねぇって。」

「そんなこと言…っ」

言うわけ、
言うわけ…

『雪比良と顔あわせたくない!』

言ってたーーー!!

過去の自分に後悔すると足元がふらつく。

「危っ。」

抱きとめられた。

「…あの、近い。そして近い。」

「もう少し。」

あたしの腹部らへんに顔を埋めて、グッと腰に腕を巻きつけられる。

心臓が保たない。

全速力で走るより、高鳴っていた。



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